思考と「アンシンク」

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思考と「アンシンク」

■思考の意味について

今回は「思考」という言葉についてお話しましょう。ちなみに「思考」という言葉も明確に定義されてはおらず、人によってさまざまな解釈がなされますので私なりの解釈でお伝えします。
「アート思考」は”考えない”といった表現をすることがありますが、でも「思考」というのはやはり”考える”ことでもあります。このあたり、考えるのか考えないのか悩むところですので、一度しっかり整理したいと思います。

「思考」は英語で”Thinking”と訳されるため、”考える”ではないか、と思うかもしれませんが、それは半分当たっていて、半分違います。「思考」とは、文字通り”思う”と”考える”の両方が含まれているのです。なので、”右脳で思って左脳で考える”、とバランスよく使うことが正しい理解だと考えます。
つまり、どう考えるのか?といきなり掘り下げていくのではなく、まずはどう思うか(感じるか)を意識し、それからその思いについて深く考えることであり、特にこれまでなおざりにしていた前半の右脳による感性をより重要視しましょう、と伝えたいのです。

「デザイン思考」が相手の気持ちに寄り添ってからどうしたらいいかを考えるように、「アート思考」はどう感じるか自分の気持ちに寄り添い、そして何故そう思うのか、考えることになります。
「思考」という言葉は『右脳と左脳の両軸を使って前進する』というイメージでとらえて、その思考の対象が”人”ならデザイン思考、”自分自身”ならアート思考、”自然”ならサイエンス思考、”社会”ならエンジニアリング思考、と対象によって思考方法が変わる、と考えています。

「感性」という言葉が海外で「KANSEI」という和製英語で使われているように、「思考」もいつか「SHIKOU」という和製英語になる日がくるかもしれませんね。

■Erik Wahlとの出会い

私がアート思考について、またアートとビジネスの繋がりを強く意識したきっかけは、2018年5月にChicagoで行われたビジネスカンファレンスのイベントに参加した時です。そのカンファレンスのオープニングキーノートで講演をしたのがErik Wahlでした。
私は彼が何者かをまったく知らずに講演が始まり、終わった時に言葉にならない感動を受けたことを覚えています。

ビジネスカンファレンスのオープニング講演の場で、突然舞台上にカンバスを並べてペイントで絵を描き始めたのですから驚きました。彼は私たちの目の前でほんの数分で見事な画を描き、私たちにメッセージを伝えてくれました。正直、私の英語力では彼の言葉はほとんど理解できませんでしたが、これからのビジネスにはこれまでと違う何かが必要だ、というメッセージはしっかりと伝わりました。そして、帰国後すぐに彼の著作本「アンシンク」を即購入し、一言一言を心に刻みながら読みました。2014年に発刊されたこの書籍は私にとって「アート思考」の考えに至る原点であり、今もバイブル的な位置づけとなっています。

「アンシンク」のサブタイトルは「眠れる創造力を生かす、考えない働き方」となっています。考えない働き方、つまり「アンシンク(Unthink)」です。ただし、考えないといっても、思い付きだけでいいと言っているわけではありません。ただ、大量の知識を蓄積して作り上げる時に考えに頼らない発想力も大事にしましょう、と伝えているのです。
この書籍を読むと、その発想力を高めるためにはどうしたらいいのか、のヒントが散りばめられていますので、アート思考力を高めたいと考える方は是非手に取ってもらいたいです。

YouTubeでも”Erik Wahl”を検索すると見つかりますので、彼がどういうパフォーマンスをし、何を伝えようとしているのか是非一度見てみて下さい。

■哲学とアート思考

「アート思考」でどこまでもどこまでも深く掘り下げて考えても絶対的な答えは見つかりません。まるで哲学のようです。哲学は、すべての成り立ちに対して疑問の目を向け、正解がなくただひたすらに思考し続けるものです。

そして、その哲学を造形で表現したものがアートになります。思考は一人だけで思い悩むものだったり、誰かと対話しながら深めていったりしますが、それを表現する作品を作ってしまうと、それを通していつでも誰もが問いかけを受け、自問自答(アート)できるのです。アート思考は哲学と深く結びついているのです。

これからの世の中、テクノロジーが人の代わりになんでも出来てしまいます。しかしAIのようなそのテクノロジーの利用を制するルールの制定が追い付かない状態になります。一つ一つルールを定めてもその妥当性を検討している間に更に新しいテクノロジーが生まれてきます。そうすると、究極的には人の善か悪かを判断する倫理観が大事になってきます。この倫理観も哲学の一部にすぎません。

なので、これからの世界にこそ倫理観を育てるアート思考が必要になってくるのです。

Satoko
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